レビュー
セーラー服、ゆかた、スクール水着…その記号性はもちろんヒロインがキチンと着こなしている、と、いうところに”楝蛙”
先生のこだわりを感じました…”comic快楽天”へ掲載された
短篇・九作品をおさめた、自身四冊目の単行本。
印象に残った収録作品は、男性主人公”春樹”が、お盆で久々の
帰郷。夏休みのプールで、監視員をしていたヒロイン”千尋”が
それを聞きつけて…な、短篇「夏が終わる」。ずっと抱き続
けてきた”春樹”への想いに処女を捧げ、終止符を打つ”千尋”を
切なく描いた、作品でした。
読んでいて印象的だったのは、本巻に収録された各短篇の圧倒
的な完成度。既刊の3rd単行本「恋のち交尾」も、記憶に残る
一冊でしたが、それを軽く凌駕しており、特色のある状況設定
に偏り(かたより)がなく、バランス感覚とセンスの良い、まと
まりを感じました。また、読み手の性癖・性向を熟知していて、
ヒロインがセーラー服、浴衣、スクール水着を記号性ともに、
キチンと着こなしており、”楝蛙”先生のこだわりをヒシと
感じ取れました。
冊数を重ねると、作風の方向性が次第に固定化してゆくもので
すが、”楝蛙”先生は意志を持って、意図的に分散させている感、
があり、次はどの様な切り口で魅せてくれるのかな、と、期待
感を持たせてくれる稀有な作家さんだと思います。単行本とし
ての完成度が際立って高い、読後感が堪能できる一冊。超良作。
あらすじ
好きになるほど、感じてしまう身体――
繊細美麗な絵柄と卓越した画力でお送りする
けなげに恋する乙女たちの発情模様。
「たべかけ」
捨て猫をきっかけにアパートに入り浸るようになった小雪。
出会いの頃は大学生だった男もアラサーになり、
まだ幼かった小雪は美しい娘へと成長した。
「……そろそろ、潮時なのかもな」
いつか終わる関係性。
小雪の幸せを願い「誰か」の元へ送り出そうとする男だったが……
「おあずけ」
ギャルと優等生の共同受験戦線。
幼馴染という縁で「ギャル」に受験勉強を教える日々。
肌がチラチラみえる着崩しのヒロインにどぎまぎするも、
エロい目で見るんじゃない、とたしなめられる。
欲望に耐えながら迎えた受験本番、いよいよ明日に試験を控えた夜に
宿泊先のホテルへとヒロインが押しかけてきて――!?
「フリーライド」
ドライブが趣味のお姉さん。
声をかけてきた美男子は、ナンパ…ではなく、ヒッチハイカーだった。
意気投合し、仕事を訪ねると、女性向け風俗店のキャストであることが判明。
偶然出会った野生のプロ男子のテクに、思わず興味がわいてきて……
「運命のひと」
地元の頃から、大学を経て社会人に至るまでずっと「腐れ縁」の女友達。
だけどずーっと彼氏が途切れないヤツで、こっちが好きになる隙もない。
月日は流れ、別の場所で結ばれた相手と婚約に到るが――
人生は「タイミング」で決まっていくけれど、
それが合わなくたって、合わなかったからこそ、ひとつになる夜もある。
他、人気作ぞろいの全9編と
担当した『COMIC 快楽天』表紙イラストや描き下ろし要素を収録。
満を持しての発売となる著者4冊目の傑作集です。
<収録作品>
たべかけ
おあずけ
フリーライド
よるまづめ
そこに尻があるから
猫宮さん
夏が終わる
ふたり夜歩き
運命のひと